そりゃあ天狗にもなるよ!

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上京して間もない頃、よく遊んでいた場所として意外な地名をあげたい。六本木だ。決して背伸びしているわけでも誇張しているわけでも見栄を張っているわけでもない。当時は本当に六本木に足を運ぶ機会が多かった。

 

みなさんがイメージする六本木はネオン煌めく眠らない街ではないだろうか? あるいは外国人と派手な夜行性の人々が行きかう街。たとえば芸能人が日夜うろうろしている街だとか。もちろんそういう場所もあるが、またちょっと違う表情を持った六本木が、自分たちの遊び場として確かに存在していた。

 

当時の六本木は永久に建設が終わらないサグラダファミリアのように、道路も建物も延々と工事中だった気がしている。六本木ヒルズが完成する前のことだ。

 

六本木NUTS、六本木CORE、西麻布GATE、西麻布YELLOW、六本木香。ざっとあげただけでもこれだけのクラブがあって、特にGATEと香にはお世話になり、スタッフさんたちにも懇意にしていただいたものだ。ゆえに、自分の出演がなくとも、お酒を飲みがてら軽い気持ちで顔を出したりしていた。顔を出すとバーテンさんもお酒をおごってくださったもので、それを期待していたわけではないのだが、今思えばかなりイイ気になっていたとは思う。

 

ある平日の夜、珍しいことに女友達と二人でクラブまわりをすることがあった。彼女は同い年で、あるグループのLIVE DJをしていた。ちょっとしたデート気分だったかどうかは覚えていないが、いつもとは違う華やかな表情の六本木で軽く食事をしてからクラブへ向かうことにしていた。

 

偶然というのは重なるものだ。我がもの顔ではなかったにしろ六本木の街を闊歩していた自分へ「ヒビキさーん」と声がかかった。声の主はテラス席にいた女性。歌い手の子だった。友人(男)と食事中だったようだ。照れ屋な俺は「おーっす」とかなんとか言って、トレドラ風に二本の指で挨拶する素っ気ない態度。一緒にいた女友達からは「ひびやん顔広いね」と言われ有頂天の極み。

 

そのまま六本木交差点に立ち戻れば、水商売風(あくまで見た目が)のおねーさんからも「あーヒビキ君!」と声を掛けられる始末。ダンサーの方だった。当時ダンスイベントのMCをやっていたので軽い知り合い程度だったが「今日は知り合いによく会うなぁ」と俺も照れ笑い。

 

気分のよいままコンビニに立ち寄れば、今度は後輩二人がお出迎え。「こんちゃーっす」な勢い。平日の夜の六本木のしかもクラブから離れた場所で知った顔に立て続けに会うというのもなかなかある話ではなかった。しかも上京して半年もたっていない頃の話だからなおさらだ。

 

偶然がたまたま重なっただけなのに、少しほめられるとすぐその気になっちゃうところは相変わらずなのです。またしても女友達からの「ひびやん顔広いね」に、天狗にならざるをえなかったわけです。めでたしめでたし。。。

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