【006】楽園のカンヴァス 原田マハ

【006】楽園のカンヴァス 原田マハ

【006】楽園のカンヴァス 原田マハ

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

もっと早く出会っていればよかったな、と思わせられるような本。原田マハの作品は、読後の影響力が強い。何かをしたくなる。この本を読み終わって真っ先に、NYの美術館に行きたい、とか、画集でも買おうかな、という欲求に支配された。人を突き動かす力のある、数少ない作家のひとりだと思う。

この作品のあらすじはこうだ。ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。

史実にフィクションを織り交ぜた作品で、なぜか五木寛之の「メルセデスの伝説」や「ヤヌスの首」あたりを思い出した。好みの作品たちだ。

メルセデスの伝説 (講談社文庫)

ヤヌスの首 (文春文庫)

「本当なのか嘘なのか」といった史実の裏側を操るようなフィクションを織り交ぜつつ展開していくのだが、そのストーリー展開自体だけでも充分に読み応えがある。誰も死なないミステリーとしての技巧が光る。もうひとつの側面としては、美しすぎるほどの純愛、が描かれており、すべてかみ合った瞬間思わずその素晴らしさに打ちひしがれるだろう。

美術や絵画に興味がなくとも、充分に楽しめる作品です。ネットで検索しながら文中の絵を眺められる現代ならではの楽しみ方もあります。手放しでお薦めできる作品です。

2017.11.08

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