27歳

27歳

お盆が近づいてきた。

フットサル仲間に不幸があった、と知らされたのはその子が27歳の誕生日を迎えるはずだった日の前日だった。5月の末に亡くなっていたのだという。自殺だったと知らされて、ショックはさらに大きい。彼とは2008年、自分がフットサルチームを立ち上げた当初からの仲間だ。当時、彼はまだ十代だった。大学生だった彼は、初回こそテストかなにかが重なり不参加だったが、二回目からメンバー入りしていた。とにかくフットサルが好きな子で、リフティングで技を競うフリースタイルなんかにも興味を持っていた。地方から出てきた東京人には一方的に親近感を持って接する私は、彼が静岡出身であることもポイントが高かった。しかし、私はフットサルをする時に限っては、パーソナルな部分を封印していることが多く、あまり強いかかわりは持ってこなかったように思う。それに干支が同じ、つまり一回りも歳が違うので、話題も合うわけがなく、こちらも無理はしなかったし、あちらも無理はしなかったのではないかと思う。

直接の原因はわからない。ただ、とにかく真面目な子だった。仕事で悩みを抱えているのかも知れないことは、なんとなく知っていた。ひょっとしたら、仕事ではなく、人生においての悩みだったような気もする。いや、言葉では表現しづらいが、たとえそれがどんな種類の悩みだったとしても、ある種の鬱傾向は以前からあったように思うのだ。それは遡ることmixiやtwitterなどで、ちらほら垣間見えていたような気がする。しかし、私には何もできなかった。

2008年に立ち上げたフットサルチームも2014年の秋ぐらいに活動を停止した。これは、表立って休止宣言をしたわけでもなく、なかなか毎週集まることも難しくなり中止にする機会が増えてきたため、自然消滅的にそういう流れになった、と自分では思っている。

彼は仕事以外には勉強的な目標と、フットサルを楽しみにしていた。もちろん、我々のチームが自然消滅したのちも、個サルや他のチームで活動はしていたようなので、フットサル活動の機会を減らしたことが何かしらの原因につながっているのではないかなどとはこれっぽちも考えてはいない。

ただ、もっと一緒にフットサルをしたかったな、とだけ思う。

都リーグに参戦した際にももちろんメンバーとして活動してくれた。感謝しかない。一緒にうまくなりたいね、と話したことは憶えている。こっそり練習して、サブ組だけでも強化していこうと話した。都リーグ参戦したメンバーの中では、彼よりも明らかに私のほうが下手だったので、彼も私が上手くなるために随所でアドバイスをしてくれていた。ともに、上昇志向は絶やさなかった。

自分がフットサルから離れてしまったことにより、彼との距離は遠くなった。だからこそ、彼が悩んで発していたSOSさえ自分には届かなかったし、悩んでいる間に何もしてやることができなかったのだ。悔やんでいるわけではない。悔やんでも仕方ないのだ。ただ、ただただ残念だとしか言いようがない。

どんな悩みだろうと、吹き飛ばしてあげたかった。「27歳? オレなんか27歳の誕生日の時は一か月後に子供が生まれるっていうのに無職だったんだぜ? そんなどん底にいても笑ってられた。そして、がむしゃらってほどがむしゃらじゃないけど、なんとなく、なんとなくやって這い上がってきたよ」

面白おかしく、伝えたかった。まあ、事実だけど。

27歳。

ほんと、まだまだどうにだってなれる年齢だよ。何回でもやり直せるし、何も始まってない人だっているぐらいだ。可能性は無限大のど真ん中ぐらいな年齢だ。
でもな、死んじまったらサラバだよ。それだけは譲れない。

こうなった以上、冥福を祈る、それしかできないのだ。
だから、冥福を祈る。安らかにお眠りください、と言う。

また、いつかフットサルしよう。
その日のために、
オレはまたフットサルを始めたよ。

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