リチャード・クレイダーマンと恋のメカニズム

リチャード・クレイダーマンと恋のメカニズム

生まれて初めて、
音楽によって感情を揺さぶられたのは忘れもしない幼稚園の卒業式後の家での話。

幼稚園の卒業式という、
人生における最初の「卒業」を経験したものの、
なんの実感もなくストーブの前でごろごろ転がっていた。

BGMには母親がセレクトしたリチャード・クレイダーマンのLP盤が、
ターンテーブルの上で回転していた。

クレイダーマンのアルバムは上品でいて、悲哀も含んでいて、
最初は卒業した新しい人生の門出を祝っているように聞こえたものだが、
途中から妙に悲しい曲調になり、まだ6歳の私の涙を誘ったのだ。

もう幼稚園の先生に会えない、という最初はたいして気にしていなかったことが、
音楽とともに増幅され、感情が揺さぶられたのだ。

まるで恋のメカニズム。恋は思い込み。

先生に会えない→先生に会いたい→離れたくない→好き→ボクは先生のことが好きなんだ

スタートからゴールまでまっしぐら。
リチャード・クレイダーマンによってすがすがしさ一転、悲しみが増幅して、幼稚園の先生に思い込みで恋をしたのです。振り返ってみると、音楽の力ってすごいなと思うのです。いまだにリチャード・クレイダーマンのピアノを聴くと、一人くすぐったくなるのでした。

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