【009】むらさきのスカートの女 今村夏子

【009】むらさきのスカートの女 今村夏子

【009】むらさきのスカートの女 今村夏子

手前味噌な自慢になるが、今村夏子が芥川賞をとるだろうと3年ぐらい前から予言していた。
ようやく本作で受賞に至ったが、これまでも「こちらあみ子」や「あひる」や「星の子」「父と私の桜尾通り商店街」など良作を連発してきている。
純文学なんでしょ? って思われがちだが、一筋縄ではいかない。
そんな生易しいものではない。

正直、みぞみぞすることの連続なのだ。

ゾワっとする。ぞくぞくする。ちょっとした違和感なのだろう。そのちょっとのズレ、違和感をを読者に感づかれないうちに許容させる。つまり異変や異常をじわじわと見せ付けて、読者の境界線を見事に曖昧にしていくとでもいおうか。そのやり口が天才的なのだ。気付いたら術中にまんまとはまっているのだ。

普通に考えておかしいことだったりする。親が新興宗教にドハマリしていて子供がそれに有無も言わさず付き合わされるとか(星の子)、一人の女をストーカーのごとく「私」が実況していくとか(むらさきのスカートの女)。「それ違うよ」とか「それダメだよ」って言うのは簡単なんだけど、そんなことを言わせる隙間も突っ込む暇もなく物語はたんたんと進む。なので、その不穏を許容して、いつしか共有して物語を読み進めていく羽目になるのだ。その感覚がとても気持ちがいい。

とにかく不穏だし普通じゃないのだが、読者にそれを許容させる手腕。
その、ズレっぷりがやみつきになる。
日常の不穏を描かせたらピカイチ。
だから、この人のファンをやめられない。

あらすじ
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。友だち作りの物語?

【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女

ぜひ、感想を語り合おうじゃないか。

2019.8.21

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